山忠 高島建設×ナカノ設計店
北海道住宅新聞 2023.12.5 掲載
太陽の恵みをアクティブでもパッシブでも最大限活用することができる現実的なプラン―。今回紹介する空知・南幌町の『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』基本プランは、建物南面の大開口やハイサイドライト、M型のこう配天井を活かし、太陽光をたっぷり室内に取り込みつつ、住まい手のライフスタイルや家族構成に合わせられるフレキシブルな間取りが特徴的な、山忠 高島建設(株)(札幌市、髙島栄一社長)とナカノ設計店(札幌市、中野剛育代表)の『ひだまりの家』。
「太陽のエネルギーを利用することが『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』のメインテーマだと受け取ったので、真南に向けて太陽光発電パネルや居室を配置するとともに、北海道の住宅の屋根として一般的なM型無落雪屋根を現代的にアレンジし、より太陽の光に満ちた住まいになるように考えた」と、ナカノ設計店の中野さん。
『ひだまりの家』は、そのように太陽の恵みを最大限享受できるプランニングと将来にわたってフレキシブルに使える間取りなど、どのようなユーザーにも対応できるところが特徴で、山忠 高島建設で同ヴィレッジのモデルハウスを担当する柴田竜久常務は「プランを見た時、より幅広いお客様のニーズに応えられると思った。『もう少し広く』『こういう部屋がほしい』と言われた時も、柔軟にプランを変更できる」と話す。
今回は同ヴィレッジの企画について、「太陽光発電の採用や、高い省エネ性の確保など、ゼロカーボンを目標とした北方型住宅に興味があり、建築家としても勉強になるプロジェクト」と考えた中野さんが、以前から仕事を通じて信頼を築いていた柴田常務に声をかけ、グループを結成。プランの作成は、中野さんが山忠 高島建設に対してどのような仕様が施工しやすいか、耐久性はどのように確保するかなど、ヒアリングを行ってから取りかかり、山忠 高島建設からのアドバイスを取り入れつつ完成させていったという。「構造に負担がかかる部分や、メンテナンスに手間がかかりそうな部分は改善策を提案したが、それ以外は特にこちらから要望することはなく、中野さんの設計意図を尊重した」と柴田常務。
完成プランは、在来工法による平屋で延床面積は約40坪(カーポート含む)。住宅本体は真南に面するよう、敷地に対して斜めに配置され、外観はリビング・ダイニング・キッチンがあるフラット屋根の構造体を、個室や水回りが配置されたM型無落雪屋根の構造体で挟み、その西側に屋根付きのカーポートを設置したデザイン。
建物のボリュームを分割することで、圧迫感を感じさせないように考えたといい、木板張りとガルバリウム鋼板を貼り分けた外装材仕上げとする。太陽光発電パネルは合計約3kW分を外壁南面の東側に設置し、窓を挟んで割り付けることでリズミカルな表情を演出した。
間取りは、リビングや主寝室、子供部屋などの居室を建物南側に配置し、リビングは幅3.0×高さ2.4E程度の大開口から、他の居室はハイサイドライトから、太陽の光を最大限取り込む。特に建物西側の子供部屋は、高さが異なる3つのハイサイドライトを連続して配置し、見える景色や室内に入る光・風にリズム感を与えることを狙っている。
また、リビング・ダイニング・キッチン部分については、リビングの一部が凸状に突き出た形となっており、南側と北側の両方にあるウッドデッキとも相まって水平方向の広がりと奥行きを感じられるほか、リビングとキッチンの窓を開けることで南北に風が抜けるようにも考えられている。
住まい手のライフスタイルや家族構成の変化に対し、柔軟に対応できることも大きなポイントの一つで、建物西側の子供部屋は玄関に近いだけでなく、玄関に入ることなくアクセス可能とすることで、介護ルームやゲストルームとして使うことも可能。2箇所に設けている洗面所とトイレも、1箇所は玄関近くだ。また、主寝室と一体となっている子供部屋は、子供が小さい時には可動収納などで仕切り、子供が成長したら間仕切り壁を設置して2部屋に分けられるようにしている。
なお、北方型住宅ZEROの適合要件となる脱炭素化対策のポイント数(P)は、太陽光発電(壁面設置で2kW以上)で3P、UA値0.28以下で3P、窓の熱貫流率1.2以下かつ日射取得率=η0.3以上で3P、夏季に効果的に通風を行える窓の仕様及び配置で1P、バイオマス利用(薪ストーブ)で1Pとし、合計11Pで適合に必用なP数(10P)をクリア。概算工事費は約5300万円。
オーナーの決定はこれからだが、柴田常務は「オーナーが決まれば要望をしっかり取り込んだ設計提案を行うことになるが、今回のプランは現実的かつ柔軟性もあるので、オーナーの暮らしに合った住みやすい家を建てることができると考えている。施工も当社専属大工が妥協することなく腕を振るうので、安心して家づくりを楽しんでもらえれば」と話す。
中野さんは「オーナーが決まっていない状態でのプラン作成はパズルを解く感覚だったが、使いやすい生活動線も含め、より現実的で多くの人に受け入れられるプランに仕上がったと思う。『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』に興味のある方には、プラン・間取りをじっくり見て、自分が住んだ時にどんな暮らしを送れるのか、どんな風景が広がるのか、想像を膨らませてもらえたら」と話している。
北海道建設部住宅局 建築指導課 企画係・普及推進係
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