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グループ紹介(住宅新聞掲載)

キクザワ×弘田亨一設計事務所

北海道住宅新聞 2023.11.15 掲載

脱炭素化へ太陽光を最大限活用

南北に細長いコンパクトな建物で、太陽光発電を最大限搭載することにより真のゼロカーボンを目指す―。今回紹介する空知・南幌町の『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』基本プランは、手の届きやすい価格でゼロカーボンを達成可能な住まいを提案した(株)キクザワ(恵庭市、菊澤里志社長)と弘田亨一設計事務所(札幌市、弘田亨一主宰)の『Linear Zero Carbon House』(リニア・ゼロ・カーボン・ハウス)。

コスパ高いゼロカーボン住宅目指す

『Linear Zero Carbon House』は、南北に伸びた2間幅の長方形の建物に、屋根・壁合わせて13.35kWと同ヴィレッジの基本プランとしては最大級となる太陽光発電パネルを設置。容量7.04kWhの蓄電池を組み合わせて発電した電気の自家消費率を高め、構造材・外装材には輸送時のCO2排出量が少ない地域材の道南杉を使うことによって脱炭素化を図ったプラン。
構造はスタッドに206材を使うツーバイフォー工法で、住宅部分の延床面積は約30坪とコンパクト。カーポート・物置を含めると約38坪になる。概算工事費は約3600万円と、同ヴィレッジの基本プランの中ではもう1つのグループと並んで最もリーズナブルだ。
「太陽光発電がたくさん載った大きい家でゼロカーボンを提案する方法もあるが、今回は『手の届きやすい価格でゼロカーボンを実現する』との考えに立ち、キクザワさんとは“シンプルかつコンパクトな建物形状でコストパフォーマンスの高いゼロカーボン住宅を提案する”というコンセンサスがあった」と弘田さん。
その考えをベースに弘田さんがプランを作成し、キクザワで同ヴィレッジのモデルハウスを担当する菊澤章太郎専務にプレゼン。両社で打ち合わせを重ね、仕様やデザインを詰めていった。「住宅等の設計で実績があり、私個人としても直感的に好きと感じる事例を手がけてきた弘田さんのプランなので、無理に手を加えず、太陽光発電パネルに関して要望を伝えた程度でそのまま進めていきました」と菊澤専務は話す。
両社が一緒に家づくりを計画するのは初めてだが、キクザワにとっては弘田さんの設計する住宅・建築物の雰囲気など、弘田亨一設計事務所にとってはツーバイフォー工法や太陽光発電に関するキクザワのノウハウなど、それぞれ自社にとって勉強になる部分が多かったことからグループを結成。お互い対等なパートナーとして、安心して仕事ができる手応えを感じていたことも、グループを組んだ大きな理由だ。

外観のイメージパース。2階西面の外壁部分は開口部以外すべて太陽光発電パネルを設置

南北に長い建物に13kW超の太陽光

ゼロカーボンを実現するうえで大きなウェートを占める太陽光発電は、445Wのパネルを屋根と西面の外壁にそれぞれ12枚、東面の外壁に6枚設置する。このパネル配置は太陽光発電の実績が豊富なキクザワの経験とノウハウが活かされており、北海道で1年を通じて安定した発電量を得るために考えられたもの。
南北に伸びた長方形の建物としたのも、外壁東西面の面積を多くし、パネルをより多く設置可能にすることが理由の一つで、「夏季はほぼオフグリッドが可能になる」(菊澤専務)。一方で西日を直接受けることにもなるので、弘田さんは「外壁西面の開口面積を抑えつつ太陽光発電パネルをできるだけ設置し、採光はパネル設置枚数の少ない外壁東面の開口部を活かすなど、バランスを取りながら計画を進めた」と語る。

太陽光発電パネルは屋根と外壁西面に5.34kWずつ、外壁東面に2.67kW設置

また、「これまでも細長い建物を設計してきたが、正方形の建物よりも使いやすいと思っている。住宅で4E以上の奥行きが必要なスペースはあまりないので、2間幅で部屋を数珠繋ぎにして奥行き感と広がりを出したほうが暮らしやすい」と弘田さん。コストを考えれば正方形のプランもありだが、2間幅の長方形であれば室内側に耐力壁や梁が増えることはなく、今回のプランの特徴の一つであるワンルーム的な室内空間が造りやすいメリットもある。

南北に細長い間取りは、奥行きと広がりを感じられるワンルーム的な室内空間をイメージ。
1階の土間は東西方向の動線を作る役割も果たしている

構造と外装に道南杉使い、建設時CO2も抑制

間取りに目を向けると、1階は6帖の土間を挟んでリビング・ダイニング・キッチンと水回りを配置。土間はセカンドリビングや薪ストーブの設置場所などに活用可能で、西側にあるカーポートからそのまま東側のウッドデッキに出て緑地帯へ抜けることができる東西方向の動線も作り出している。2階はホールを挟み、ウォークインクローゼットのある主寝室と2つの洋室で構成されており、吹抜けを介して1階とつながる。
室内の仕上げは、ナラのフローリングや突板、珪藻土配合の石こうプラスターによる塗り壁など、キクザワが標準仕様としている建材を想定し、天井は構造現しとする予定。外装材には構造材と同じく道南杉を採用し、木の表情を活かすとともに建設時のCO2排出量も抑え、ゼロカーボンにつなげる考え。
なお、北方型住宅ZEROの適合要件となる脱炭素化対策のポイント数(P)は、太陽光発電(屋根・壁面のパネル合わせて13.35kW)で6P、蓄電池の設置で5P、UA値0.28以下で3P、主たる構造材に道産木材等(道南杉)活用で2P。合計16Pで適合に必用なP数(10P)を6P上回っている。
オーナーが決まるのはこれからだが、「プラン自体はオーナーによって変わってくる部分もあると思うが、社員大工による断熱・気密施工などによって、しっかりした性能の確保を大前提に高いレベルで形にしたい。太陽光発電も確かなノウハウを持っているので、社員大工による施工という安心感も含めて私たちのプランを検討して頂ければ」と菊澤専務。弘田さんは「このプランをそのまま建てることもできるし、建てる方の気持ちに寄り添ってプランを自由に作ることもできる。その点は設計事務所だからこそ柔軟に対応できる部分なので、まずはこのプランに興味を持って頂いた方とお話を進めていきたい」と語っている。

打ち合わせを行う弘田さん(左)と菊澤専務(右)

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