大平洋建業×ボンアーキテクツ
北海道住宅新聞 2023.11.25 掲載
土間リビングや5つの庭で地域とつながる―。今回紹介する空知・南幌町の『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』基本プランは、南幌町ならではのライフスタイルにこだわった住まいを提案した大平洋建業(株)(札幌市、佐藤誠社長)と(株)ボンアーキテクツ(札幌市、森徳彦社長)の『暮らしと庭づくりを楽しむ四季の家』。
「想定したユーザー層は、札幌圏や本州から移住してくる活動的な子育て世帯。南幌町は自然が豊富な一方、中心市街地の整備が進み、若い世帯も増えているので、遊びながら田舎暮らしをしたい人に向いているまちだと思う」とボンアーキテクツ・森社長。
『暮らしと庭づくりを楽しむ四季の家』は、そのようなユーザーが豊かな自然環境の中で、日々の暮らしを楽しみながら地域の人々とのコミュニティづくりもできることをコンセプトとしたプランだ。
両社が一緒に家づくりを計画するのは初めてだが、35年ほど前から各団体・研究会等で活動を共にしており、現在もNPOパッシブシステム研究会の会員同士。『みどり野ゼロカーボンヴィレッジ』のワーキンググループにも参加していた森社長から大平洋建業・佐藤社長に声がけし、グループを結成した。「南幌町は以前から北方型住宅に力を入れてきたことに加え、子育てや人口増加に関する施策も積極的にPRしてきたまち。建築に携わる者として、そのようなまちで豊かな自然環境を活かしつつ省エネに貢献する家づくりに関わりたいと考えていた」と佐藤社長は言う。
プランは森社長が作成した5、6パターンの案を、佐藤社長や大平洋建業のスタッフと一緒に検討。実現できる可能性が高いこと、快適で暮らしやすいプランニングであることなどをポイントに最終的な提案プランを作り上げていった。
住宅本体は、在来工法による長方形の木造2階建てで、延床面積は約33坪(カーポート・アプローチ除く)。敷地の北側に寄せて斜めに配置し、南側にあるカーポートと屋根をかけたアプローチでつながるほか、周囲にはダイニングからアクセス可能なウッドデッキのある中庭や家庭菜園など、用途の異なる5つの庭を設けている。切妻屋根の外観は、ガルバリウム鋼板をメインとし、道南杉をアクセントに使った外装仕上げ。
室内は一部を除いて内装仕上げを行わず、道産材の柱や梁、構造用合板などによる構造体を現しにしているのが大きな特徴。1階は全面土間のリビングやダイニング、キッチン、水回りなど、2階は寝室と子供部屋、フリースペースを配置しており、リビングの吹抜けを通じて1・2階の空間が連続する。
このプランで特に提案したかったこととして、森社長と佐藤社長は『構造体を現しにした室内』と、『コミュニティづくりができる空間』の2つを挙げる。
構造体を現しにした空間は、木の香りや手触りによる癒やし効果が得られるようと考えてのこと。他に見たことのない雰囲気を出したいという意図もあるという。構造材は道産カラマツの集成材や構造用合板を使う考えで、長手方向の外壁は外断熱とし、壁倍率を確保するために軸組屋外側の耐力面材には28mm厚の構造用合板を採用する。
コミュニティづくりができる空間は、町外からの移住者がオーナーになることを想定してのこと。暮らし始めてから孤立することがないよう、近隣住民との交流がしやすくなる配慮・工夫を行っている。
その一つが全面土間のリビングで、近隣住民が玄関から入って靴を履いたままでも会話やお茶を楽しみ、交流することができる“外に近い室内”。モルタル仕上げの床にはパイピングを行い、温水を回して床暖房するほか、薪ストーブも設置予定だ。
設備関係を見ると、同ヴィレッジで必須となる壁付け太陽光発電パネルはメンテナンスや交換のしやすさなども考慮し、カーポート南側の壁面に出力400Wと同265Wのパネルを4枚ずつ設置。電気の使用状況や天気予報などの情報をもとに最適制御を行うパワーコンディショナーと容量7.7kWhの蓄電池に接続し、太陽が出ていればブラックアウトになっても普段とほぼ変わらない暮らしができるという。
このほか、暖房・換気はパッシブ換気床下暖房システムで、暖房熱源にはエコジョーズを使用する。
なお、北方型住宅ZEROの脱炭素化対策ポイント数(P)は、太陽光発電(壁面設置で2kW以上)で3P、蓄電池の設置で5P、UA値0.28以下で3P、窓の熱貫流率1.2以下かつ日射取得率=η0.3以上で3P、採光面の主たる窓に有効な庇設置で1P、パッシブ換気採用で1P、主たる構造材に道産木材等活用で2P。合計18Pで適合に必用なP数(10P)を8P上回る。概算工事費は約5900万円。
両社ではオーナー募集にあたり、プランの内容や同ヴィレッジのロケーション、南幌町の住宅取得支援制度などを紹介する動画を制作。早ければ今月中にも公開したい考えで、佐藤社長は「私自身、都市と田舎の中間的な暮らしができる南幌町は好きなまちだが、特に子育て世帯にとっては、おおらかに子供を育てられる環境が大きな魅力。その南幌町での暮らしに合うプランであることを、ぜひ感じ取ってもらいたい」と話す。
森社長は「室内では木の空間に包まれて快適に暮らし、屋外ではウッドデッキでのひとときや家庭菜園を楽しんだりなど、南幌らしい暮らしができることを一番に考えた。オーナーにはこの住まいと一緒に暮らしを楽しむことで“みどり野の風景”をつくって頂ければ」と話している。
北海道建設部住宅局 建築指導課 企画係・普及推進係
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